| 本書は難関である技術士試験、総合技術監理部門の「手引き書」となっている。 ビルの自動回転ドアや流水プール、いずれも身近にあり、買い物やレクリエーションを彩るものとして、人を楽しませる。しかしながら、そこには思いがけないリスクが潜み、特に子どもが巻き込まれる痛ましい事故が起こることがある。再発防止のために、リスクマネジメントとトレードオフの観点から事故を検証し、設計や施工、運営管理の面から課題を明らかにする。 
 近年、技術の現場では、経済性と安全、環境保護と開発といった相反する命題にどう対処すべきかが常に問われており、こうした「トレードオフ」を解決するための有効な手法としての「リスクマネジメント」と「総合技術監理」が重要視されている。本書は現役の技術者たち21名が、自ら体験したトレードオフとその解決事例を多数紹介した。第4版では、東日本大震災に起因する災害や事故等により浮上したリスク問題であり問題解決が急がれている原発事故、津波避難、放射線影響、BCPなどの新しい話題を盛り込んだ。また、危機管理への対応や、個人情報漏洩の危機、JR福知山線事故等、前作に収録されている事例も最新の内容に改めたほか、TPPと食、少子高齢化と年金危機、青少年の進路選択など、テーマの幅を広げ、よりユニークな内容となった。
 考えられる日々のリスクに前向きに取り組み、乗り越える術を見つけ出す。読み物としてもさらに充実。
 
 第4版 刊行にあたってはじめに
 第1章 誰もが陥りやすいトレードオフのわな-リスクマネジメントのすすめトレードオフとは?
 リスクマネジメントの基本
 総合技術監理とは
 出張のリスクマネジメント-東京でのプレゼン
 身近な総合技術監理-朝食をつくろう!
 リスクマネジメント用語について
 第2章 ケーススタディ 技術の現場から-トレードオフとの果てしなき戦い1 セキュリティ認証取得におけるトレードオフ
 ―個人情報や保護体制の構築
 2 携帯電話の地理情報にみるリスクマネジメント
 ―安全と、知られるリスクのトレードオフ
 3 情報資産のリスク分析
 ―様々な脅威から、情報資産をどう守るか
 4 輸入食品の安全性におけるトレードオフ
 ―消費者が選ぶ基準とは
 5 日本の食はどう変わるか
 ―自給率上昇か輸入依存か
 6 水道水質と制御システムのリスクマネジメント
 ―水安全計画に基づく水質管理
 7 回転ドアのトレードオフ
 ―弱者を守り、技術も発展させるために
 8 製造工程におけるホコリ対策のトレードオフ
 ―目に見えない小さな敵から企業を守る
 9 開発と希少種のトレードオフ
 ―トレードオフの消耗戦を打破するために
 10 システム開発のトレードオフ
 ―銀行システムのトラブル事例から
 11 プロジェクトで不測事態発生!
 ―官庁システムのトラブル事例から
 12 BCP策定のトレードオフ
 ―緊急事態を生き抜くために
 COLUMN 東日本大震災の前後におけるBCP/BCMS策定状況
 13 電力供給のトレードオフ
 ―計画停電から垣間見えるリスクマネジメントの落とし穴
 14 想定外の災害とリスクマネジメント
 ―大震災による橋梁の被災と「想定外」
 COLUMN 被災地支援のリスク管理
 15 津波防災のトレードオフ
 ―技術者のみならず社会全体で取り組もう
 16 都市における災害時のトレードオフ
 ―帰宅困難! そのとき、あなたは?
 COLUMN BCPステップの考え方
 17 企業倫理と企業経営のトレードオフ
 ―食品偽装事件からの検討
 18 技術者倫理におけるトレードオフ
 ―被用者・受託者と専門職、二つの立場で
 [ESSAY]ソバアレルギーについて
 第3章 実践! リスクマネジメント原子力発電のリスクマネジメント
 東日本大震災と水道システム
 放射能リスクとバイアス
 COLUMN 除染をめざして
 地震と液状化のリスクマネジメント
 外来生物のリスクマネジメント
 COLUMN 希少種と外来生物の奇妙な蜜月関係
 JR福知山線事故再考
 本質安全設計とリスクマネジメント
 名水を守れ
 スプラウト(発芽野菜)のリスクマネジメント
 個人情報漏洩の危機
 事業仕分けと先端技術
 青少年の進路選択
 COLUMN 子どもの教育に思う
 少子高齢化と年金危機
 COLUMN リスク学について
 ミス防止のトレードオフ
 [ESSAY]錦鯉の飼育におけるトレードオフ
 おわりに第4版のあとがき
 索引
 執筆者紹介
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